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ガーバー(Gerber)の属性が拡大

執筆:Karel Tavernier/発表: Printed Circuit Design & Fab

旧フォーマットの最新拡張版では、レイヤの構造、特性、機能を記述することができます。

ガーバーフォーマットは、あらゆるプリント基板設計・エンジニアリングソフトウェアで出力や読込が可能で、最も繊細且つ大変重要なプロセスの一つCAD-CAM間のデータ転送において、事実上、標準規格として認められています。ガーバーは画像記述言語であり、シンプルでパワフル、1レイヤにつき1ファイル形式で複雑な設計内容を完全かつ正確に記述します。ガーバーフォーマットは装置が読み取ることも、人が見て理解することもできるような構造になっています。

ガーバーは、プリント基板に必要な全レイヤ・全ドリルおよびルーターをグラフィカルに記述することにより、あらゆるCAD-CAMアーカイブを他のなによりも広範囲に、また最も複雑を極める部分をカバーしています。その他の基板設計アーカイブも重要ですが、現時点ではガーバーフォーマットに画像データ以外の情報を持たせ伝達することはできません。例えば下記に挙げる情報が該当します。

  • ネットリスト
  • 画像およびドリルファイルの機能
  • スタックアップ、材料、色
  • 様々な製造上の指示

一見すると簡単に解決できそうに思われるかもしれません。確かにネットリストの場合、数十年に渡り広く用いられてきたIPC-356A規格があり、ネットリストを伝達するには最適なフォーマットです。ただ実際には、IPC-356Aファイルが添付されていなかったり、上手く運用されていないケースが見受けられ、CAMエンジニアの混乱を招いたり余計な作業を発生させたりしています。しかし正確なIPC-356Aを活用していれば、アーカイブのネットリスト部分をカバーしてくれる申し分のないソリューションです。


その他の情報、つまり画像および画像エレメントの機能、スタックアップ、材料、色、一般的な指示のような情報は、散乱していて分かりづらく、CAMエンジニアが探さねばならなかったり、内容を汲み取ったり、時には設計者の意図を推測する必要があります。このような状況は、これらの情報追加に対応した規格が存在しないために起きています。おそらく設計者は、任意でファイル名の中に情報を盛り込んだり、画像の中に埋め込んだりして対応していることでしょう。つまりどういうことかというと、ガーバー画像の右上コーナー部分に例えば「トップソルダーマスクレイヤ」や「ソルダーマスクは青」といった注記があるかもしれません。またはレイヤの情報は全く異なる場所にあるかもしれません。例えば別途PDFファイル、描画ファイル、またはテキストファイルが用意されていて、そこにまとめられているかもしれません。どのようなかたちであれ、CAMエンジニアに余計な負担を課していることになり、作業そして製品にまで必然的に余計なコストや時間がのしかかることになります。最悪の場合、廃棄品や低い製品性能をもたらしかねません。

今年前半に発表した記事1では、ガーバーとIPC-2581フォーマットを合理的に活用することで欠けている部分を補う策を探りました。それは、既に業界で使われ理解されているフォーマットを、その使用や理解を妨げることなく改良し微調整していこうというものです。また記事では、CAD-CAM転送の画像部分には特に問題がないので修正の必要はないことを説明しました。画像に関しては、長年にわたりガーバーが優秀にタスクをこなし、十分に認知され、テストされ、変更が不要です。

問題が起きるのは、書き込まれた追加の指示、機能、説明データの転送です。ガーバーを画像フォーマットとして使う一方で、IPC-2581にわずかな変更を施すことで、業界で通用する規格で、これらのデータのいくつか(スタックアップ、コンポーネント、その他アーカイブデータ)を伝達するために使用できます。CAD/CAMのプロや装置メーカーは、複雑でバグのリスクがありテスト・承認に長期プロセスを要するワークフローをゼロから導入する必要はありません。安全な画像フォーマットを引き続き使用し、大幅に改善したアーカイブ移管からメリットを得られます。


第2のガーバー拡張 

本項では残された課題に対するアプローチを紹介していきます。私共のアプローチは、画像データと密接にリンクする追加情報の記述方法を明確化し秩序を持たせるため、ガーバーフォーマットを改訂していくことです。この改訂により、現在の分かりにくく混沌とした作業が、明瞭な運用や仕組みに変わります。また1月に提議したIPC-2581の変更(前述)とまさに一致しますが、今回提案する改訂はガーバー単体の開発として行う重要な改良です。実際には典型的なケースで、ガーバーとIPC-2581を組み合わせることで、80%以上の情報をカバーできることになるでしょう。

新たな改訂により、設計者には規格化した方法を提供します。少なくともメモのようにCAMに送るアーカイブに全ての必要データが揃っていることを実現します。またCAMがすぐに認識できるように、明確で業界に通用する規格というかたちで、各特性だけでなく、レイヤ構造や各画像が示す基板の箇所を記述する方法を提供します。製造工程、製品、ロケーション、文化、言葉などに左右されず、作業する人が誰でも分かりやすく明確な方法で安全に通信できることになります。

重要なのは、今回の改訂では、注釈データを現行のガーバー画像データ同様に装置で読み込めるようにするので、高いレベルで自動化が可能だということです。

また拡張なので、既存のCADやCAMシステムは最小限のマイナーチェンジだけで対応でき、ベネフィットを得られます。一方、設計者やエンジニアは実作業においてほんの少し変化が生じますが、手順が標準化されます。同様に重要なのが、拡張なので既存のワークフローに支障をきたしません。ソフトウェアを新たな性能に対応させていなくとも、従来のワークフローをそのまま運用できます。何か購入が必要なわけではありません。

どのように活用するか。現行のガーバーフォーマット、拡張ガーバーフォーマットに加えて、第2の拡張版の登場を控え、現在その仕様案を準備しています。本記事では、現行の拡張ガーバーフォーマットを第1拡張(X1)、今回提案する新ガーバーフォーマットを第2拡張(X2)と呼ぶことにします。

ではX2の全般的な指針をご紹介させていただきます。

属性

X2は属性の使用が中心になります。属性はラベルに類似し、画像ファイルまたは画像内の各特性に関する情報を提供します。属性を使用する利点は、現在のCAD/CAMシステムの能力とスムーズに適合し、CAD/CAMのプロやソフトウェア開発者が既によく知る画像記述表記であるということです。

X2では、効率的なCAD-CAMコミュニケーションにおいて最も重要となる属性を規格化し、現行のガーバー仕様を拡張します


ファイル特定の属性:概要を前述しましたが、ガーバーデータは、数多くのファイルを保持するアーカイブの形で転送されます。基板の各層に対応した画像ファイルがあり、ガーバーフォーマットがドリルデータとして使用されるような現場では、ドリル用の画像データもあります。また、数件のテキストファイルや設計図があり、追加情報を保持しています。基板設計アーカイブを受け取ってCAMエンジニアが先ず行うことの一つに、全ての銅・ソルダーマスク・レジェント・ドリル・その他のレイヤというように、順序正しく、基板ビルトに忠実に、レイヤファイルを番号へ割り当てていく作業です。このファイル割当ては規格化されておらず、各CAD設計者が個々のシステム内で記述します。CAMエンジニアは、瞬時に、ファイルで銅レイヤやソルダーマスクレイヤの有無を見分けることはできません。実際にファイルを開き画像を見てみるか、付属のテキストドキュメントで内容を確かめたり、画像内で情報を見つけて、または極端な例ではお客様に電話で問い合わせるなどして、初めて知ることができます。 

これには解決策があります。装置でも人でも解読できるようにファイル機能を示す属性を規格化し、適用していくというものです。これによりファイルに含まれる画像の機能がはっきりします。既に私共はX2でこの試みを進めています。この方法であれば、シンプルで、既存のCAD/CAMシステムと適合するからです。例えば、ガーバーファイルのヘッダーに「%AF,FileFunction,Solder mask,Top*%」というステートメントが追加されていれば、その画像の機能はトップソルダーマスクであることが分かります。属性に対応しているCAMシステムであれば、自動的にファイルをレイヤ構造のトップソルダーマスク枠に割り当てます。属性に対応していないCAMシステムでは、例えば「Unknown parameter %AF,FileFunction,Solder mask, Top*%」のようなエラーメッセージが出ますが、画像はX1として正しく読み込みます。エラーメッセージの文言においても、CAMオペレータに対しファイルの機能を明示すので、情報を求めてアーカイブ全体を探しまわる必要はなくなります。

機能をもつレイヤは全てこの方法で識別できます。また製造に関する指示が記述されている付加的な設計図でさえ、CAMシステムで識別し指示を出せます。

ファイルコンテキスト属性を使い、より多くの情報を保持することが可能です。ソフトウェアが「%AF,FileContext,Coupon*%」という属性を検出した場合、そのファイルはテストクーポンを記述しているもので、基板やプロダクションパネルなどではないことが分かります。X2が提供する属性は高度に分節化され、豊富な情報が見やすく瞬時に判別できるかたちでCAMソフトウェアやエンジニアに渡ることになります。

オブジェクト属性:属性を使ってレイヤを標識化できるように、レイヤ内の様々なオブジェクト(フラッシュ、ドロー、エリアなどの特性)も同様なことができるようになります。例えば、CAMシステムが「%AO,PadFunction,Via*%」という属性ステートメントと結び付いたラウンドパッドを読み込むたびに、システムはそれをビアパッド(via pad)と認識します。ソルダーマスクを処理する際や当然ですがプラグ接続する際に、ビアは特定の方法で処理するので、CAMがビアの位置を把握しておく必要があります。


ユニバーサルな互換性

業界のCAD/CAMシステムをX2に対応させるには、CAD/CAMシステムのベンダー側で微調整が必要になります。CAD/CAMを専門とする方々が協力すれば総合的な改善が期待でき、労力を払ったとしても何倍も報われることになるでしょう。システムを微調整することで、ベンダーは、ユーザーのアーカイブ作成やエントリープロセスの多くを統一し自動化に対応させることができます。但し、X2ファイルは微調整をしていないCAD/CAMシステムとも互換性は維持しています。画像部分のみに対応し、新しいパラメータの影響は受けません。この場合にはX2ファイルがX1ファイルであるかのように処理され、正しい画像が生成されます。CAMエンジニアが微調整をしていないシステムを使っていても、X2形式でファイルを受け取ることにメリットがあります。エンジニアのCAMシステムが例えば「File function: Top copper layer」といった属性ステートメントを認識できなくても、エンジニアはそれを見て確実に内容が分かります。受け取ったアーカイブの取り扱いが大幅にやりやすくなることでしょう。

このように、X2フォーマットは設計者やCAMエンジニアの時間を節約し、リクエストやオーダーに要する処理時間の迅速化に貢献します。また仮にお客様のCAMシステムがX2の新規属性に対応していなくとも、オペレータはこれまでのワークフローにのっとって作業できます。余計なコストは発生しません。

今回のアプローチで、画像転送のジオメトリック部分を現状維持とした点は、プラスに働いています。これは根幹であり、基板の記述において最も複雑なのが画像です。幾何形状に係わるソフトウェアは開発が難しく、デバッグに長時間(しばしば数年)かかります。Algorithm Design Manual2では、「根本的なジオメトリック要素の実装はリスクを伴うタスク」、「実行する決意を固めたならば、多大な努力を払うことになるだろう」などと言及しています。そうとはいえ、CAD-CAM転送においては、画像内のエラー検出が困難でも廃棄を生むことになりかねないので、このような開発・実装は必要になります。CAD/CAMをご専門の方々はそれをご存知で、その為、まったく新しい画像フォーマットに切り替えることを嫌います。今回のガーバー改訂は、このような問題と無縁です。現行ガーバーにおけるデータ転送のジオメトリック部分は、記述側にとっても読み込み側にとっても、これまでと何ら変わりないからです。

Ucamco社はガーバーフォーマットを管理する者として、ガーバーが産業に貢献できるように全力で取り組んでおります。X2は設計と製造とのコミュニケーションを向上させるとともに、現在のプロセスで欠けていたものを補完します。これを実現させることで、明るい将来に向けて産業を飛躍させる一助になると考えております。 

より詳細な情報をご希望の場合は、Extending the Gerber Format with Attributesにて新拡張版の技術内容に関する詳細記事をご覧いただけます。なお、プリント基板の製造、設計、エンジニアリングをご専門とする方々で、産業の発展を目指し当社と共に取り組んでいただける方がいらっしゃいましたら歓迎いたします。 

参照
1. Karel Tavernier, Kick-Starting a Revolution: Gerber Meets IPC-2581, January 2013
2. Steven S. Skiena, The Algorithm Design Manual, Springer-Verlag New York, 1998.

Karel Tavernierは、Ucamco社のマネージングディレクターです。( karel.tavernier@ucamco.com